今では当たり前のように利用している「スマホ」ですが、iPhoneが日本の携帯市場に初めて登場したのは2008年のこと!
電話=NTTという時代から、docomo、au、SoftBankの大手3社の時代へ。そして格安SIMを使った情報通信サービスへと、時代は移り変わっています。今回は日本のモバイル通信市場について振り返ってみましょう。
携帯電話の始まりからスマホが普及するまで
そもそも、携帯電話が誕生したのはいつのことでしょうか? 1970年に大阪で開催された日本万国博覧会で展示されていた「ワイヤレス・テレフォン」がその源流だといわれています。
モバイル通信市場に関する年表
1970年 | 日本万国博覧会(大阪開催)でワイヤレス・テレフォンが展示 |
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1979年 | 国内で自動車電話サービスが開始 |
1885年 | 日本初のポータブル電話機である「ショルダーホン」が発売 |
1989年 | DDIセルラーグループが小型の携帯電話を発売 |
1999年 | 携帯電話を使ったインターネット接続サービスが開始 |
2001年 | b-mobile(日本通信)がPHS回線を借りてデータ通信サービスを開始 |
2002年 | 総務省が「MVNO事業者ガイドライン」を策定 |
2008年 | SoftBankが国内で初めてiPhoneを発売 |
2010年 | 初のAndroid端末が発売 |
2011年 | コミュニケーションアプリ「LINE」がリリース KDDIがiPhoneの取り扱いを開始 |
2013年 | docomoもiPhoneの取り扱いを開始 |
2014年 | VoLTEサービスが開始 |
2018年 | 総務省が「モバイルサービスの提供条件・端末に関する指針」を改正 中古端末のSIMロック解除を義務づけた |
1970~1980年代:携帯電話の誕生
「持ち運びができる電話機」が初めて登場したのがこの頃。お笑い芸人の平野ノラさんでおなじみのショルダーホンが発売されました。日本初のポータブル電話機でしたが、そのも重さはなんと3kg!今では考えられない重さです。
手のひらサイズまで小型化した携帯電話を発売したのはNTT。このとき、「携帯電話」という言葉が誕生しました。とはいえ、重さはまだ900g。この時代は、まだまだポケベルが主流です。
1990年代:ポケベルから携帯電話へと主役交代
さまざまな携帯会社が登場し、各社の競争が激しくなってきたのがこの頃。端末買取制度が始まると、普及に加速度がついてきます。いよいよ、通話以外の機能が発表されるように! 着信メロディ機能やSMSサービスが開始しました。
2000年代:写メ、着うた、ワンセグ
2000年代には、カメラ付き携帯や着うたサービス、動画送信など、今では当たり前の機能が実装されます。docomo、au、SoftBankの3大キャリアが出揃いました。そしてついに、2008年にSoftBankがiPhoneを発売します。
2010年代~:スマホが普及しMVNOの時代へ
スマホは飛躍的に普及します。iPhoneだけでなく、Androidの端末も登場!アプリも、LINEがリリースしたことをきっかけに、TwitterやFacebookなどのSNS利用者が増加します。ユーザーの増加に伴い、コミュニケーションツールとしてのスマホの存在感が大きくなってきました。
格安SIMの登場
スマホ時代を背景にMVNO(Mobile Virtual Network Operator)、「仮想移動体通信事業者」が登場します。MVNOは、docomoなどの大手キャリアから回線の一部を借りて通信サービスを提供する会社。ざっくりいえば、格安SIMを提供している会社のことです。
日本でのMVNO第一号は、b-mobile(日本通信)です。2001年にPHS回線を借りてデータ通信サービスを開始しました。実は、MVNO誕生の背景には国からの働きかけがあったのです。
国の電波を統括する総務省は、2002年頃から自由化促進を進め、市場を後押ししています。大手キャリアから通信回線を借り受けるかたちで、新規参入の事業者が増えていくよう仕組みました。
格安SIMが普及し始めたきっかけ
2008年に「MVNO事業ガイドライン」が改訂されます。「通信事業者はほかの事業者から回線を貸してほしいと要求されたとき、不当な理由がなければ貸し出しを了承しなければならない」というルールができたのです。
つまり、キャリアはMVNOに回線を貸してほしいと言われたら、むやみに断れないということ。これをきっかけに格安SIMが普及し始め、総務省もさまざまな施策を発表していきます。
SIMロック解除の義務化
スマホにはSIMカードと呼ばれる、電話番号などの契約情報が詰まった小さなICカードが挿入されています。キャリアで購入したスマホには、そのキャリア系の回線でしかスマホを使えないようにするため、「SIMロック」がかけられています。
SIMロックがかかったままだと、好きな回線を自由に選べません。そこで、総務省は2018年に、中古端末のSIMロック解除を義務づけました。
ロックを解除できれば、キャリアにこだわらずにSIMカードを入れ替えることができ、自由な通信サービスが実現します。なお、実際に適用されるのは2019年9月1日からです。
キャリアからMVNOへの卸価格の値下げ
MVNOが回線をスムーズに借り受けられるようにねらった施策もあります。総務省は、MVNOが大手キャリアに支払う回線接続料の引き下げを進めています。
総務省は自らが管理する電波を大手キャリアに割り当てる一方で、MVNOがキャリアに支払う接続料の引き下げを求めたのです。この施策のおかげで、新しいMVNOがモバイル通信市場に参入しやすくなりました。
今やMVNO事業者は900社以上!回線を借りるコストが下がればユーザーへの還元も大きくなる=スマホの料金がさらに下がるかもしれません。ユーザーにとってはありがたいことですね。
MVNO – docomo系・au系・SoftBank系の比較
現在のモバイル通信市場について
現在、スマホは日々の暮らしに必要不可欠な存在です。SNSによって、1対1から複数の相手へ、文字ではなく写真、動画へとコミュニケーションのあり方も変化しました。動画を見るのに適した高解像度、大画面のスマホがヒットしています。
MVNOによる「高機能」「低価格」を備えたスマホ端末も数多く登場。各社さまざまなサービスを用意しているので、自分ならではの端末やプランを選ぶことができます。大手キャリア三強の時代から、フレキシブルな通信サービスを享受できる時代へと移行したのです。
格安スマホ、格安SIMの認知度も8割を誇るまでになりました。「最先端のスペックがいい」「とにかく安く使いたい」……たくさんの選択肢からプランを選び、低コストでスマホを使うことができます。
とはいえ、格安SIMの利用者はまだ多くはありません。通信速度への不安、乗り換え手続きの煩わしさなどが課題に挙げられます。大手キャリア3社は「2年縛り」などユーザーの囲い込みを続けており、主要な通信料金は足並みをそろえるなど、競争が盛んとはいいかねる現状です。
どんどん普及していく格安SIM
「大手キャリアは安心」そんな声も聞こえてきます。「今のままで十分」「面倒だから」という気持ちもあるかもしれません。
その一方で、はじめてのスマホに格安SIMを選ぶ10代ユーザーが増えています。また、男女ともに60代以上のユーザーも増加を続けているとのこと。世代や関わらず格安SIMを手に取ってもらうために、MVNO各社はより安心できる環境づくりをめざしています。
大手キャリアと同じように、ショップを構えるMVNOも増えてきました。サポートが充実すれば、選択の敷居が低くなり、よりユーザーの裾野が広がることでしょう。
新しい技術・高度なスペックが常に話題となるスマホにおいて、MVNOの登場はユーザーにとって革新的なことでした。世間に追いついていくためにも、格安SIMに関する情報をアンテナを張っておきたいですね。